ウミガメ向きのネタ



問題を作ることは元ネタを探すことから始まります。
元ネタはストーリー性のあるものなら何でも構いません。漫画、小説、映画、ドラマ、実話……
それからもちろんご自分で考えられた話でもいいでしょう。
しかしどんなネタでも問題になるというわけではありません。
どんなに腕のいい料理人でも材料が悪くては美味しい料理は作れません。
それと同じでいい問題を作るためにはいい元ネタが必要なのです。
では、どんなネタが問題を作るにあたっていいネタと言えるのでしょうか。
一概には言えませんが「不思議な状況、あるいは不思議な展開」
あることがその条件の1つとして考えられます。

「不思議な状況、あるいは不思議な展開」とは具体的にどういったものを言うのでしょうか?
例として挙げるのならばテレビのバラエティ場組などで時たま見られる
「今テレビつけた人は訳分かんないでしょうね」の場面を思い出していただければ
少し分かりやすいと思います。事情を知らない人間が見たら思わず
「こいつら一体何をやっているんだ?」「どうしたらこういうことが起きるんだ?」
と言ってしまいそうな奇妙な状況や展開。それが含まれていればそのネタは
問題になる可能性があるということです。

また、それ以外にも元ネタに求められる条件というものがあります。

@特殊な知識が含まれないこと。
ウミガメは知識量を競うゲームではありません。
一般常識程度の知識さえあれば、誰もが正解を導き出せるのがウミガメです。
専門知識が含まれる元ネタを使うのは避けましょう。

尚、これと同様の理由で心霊・超常現象が含まれる問題も
誘導の難しさは若干上がります。

A強引でないこと
無理のある話を元ネタとして使ってはいけません。
不合理な部分があっては回答することも困難ですし、正解が出て
「なるほど、そういうことだったのか」と納得できてこその問題です。
理にかなった元ネタを選びましょう。

B奥行きのある話であること。
元ネタを見つけたらまずは要約してみましょう。
その時、例えば「切手の裏側に塗った毒を人になめさせて殺した」というように
1行で収まってしまうようなネタはウミガメには向いていない、と私は考えます。
問題を作るには少なくとも3〜4行は内容が欲しいところです。
小ネタならまだしも、良問と呼ばれる問題を作りたいのならにはそれだけのストーリー性が必要です。
内容が少ないと、質疑応答無しで正解が出てしまう恐れが高まるからです。

※要約したネタは解説文としてそのまま利用できます(改変する場合もありますが)。
 使えそうなネタを見つけたらまず要約する癖をつけましょう。

C当てる内容が多すぎないこと。
かといって当てるべき内容が多すぎるのも困りものです。
正解が出るのに時間がかかりすぎることは、すぐに正解が出てしまうよりも
避けるべきことだからです。元ネタを選ぶ際にはイエスかノーの返答だけで
推理できる内容かどうか、よく考えましょう。
特に、未来の世界や異世界を舞台とする元ネタはおすすめ出来ません。
こういったいわゆる異世界ものはある意味、何でもありです。
現実世界と異なる秩序、法律、生物などをいくら出しても問題ありません。
その自由度の高さがかえって危険なのです。こういった「現実には存在しないもの」が
正解と深く問題がある場合、回答者は「現実には存在しないもの」が
どういったものなのかを当てる必要があります。これは回答者にとって大変な作業です。
誘導に自身の無い方は避けた方が無難です。


以上の点をふまえて、実際にどのようなネタが問題として成立するのか、
以下に実例を挙げてみました。いずれも私が問題の元ネタとした使用したものです。


ネタその1「オリジナル」
地雷を踏み、両脚が吹き飛んだ兵士。彼は痛みにのたうち回りながら考えた。
このままでは助かる可能性は低い。たとえ助かったとしても、
自分の介護に貴重な労力が費やされることになる。
ならば、自分の命と引き替えに地雷を1つ除去してやろう。
そうすれば地雷の被害に遭う人間が1人減る。
今の自分にできることはそれだけだ。
彼はそう考え、効率よく地雷を探せるように渦を描くように地面を這いずり始めた。

だがその思いもむなしく、彼は地雷の上を通り過ぎる前に力尽き
後には渦巻き状の血痕だけが残った。


血痕が渦巻き状になっているという状況……なにやら事件性がありそうです。
使いましょう。


ネタその2「墓場へ行く娘」
その村の長者には美しい娘がいた。あちこちから結婚を申し込む男がやって来るのだが、
次の朝にはみな逃げ帰ってしまう。不思議に思った男が結婚を申し込みに行くと、長者は言った。
「わしの娘には妙な癖があってな、夜中に一人でどこかに出かけてしまうのだ。
お前さんに娘がどこへ行くのか、確かめて欲しい。そうしてくれればお前さんを婿として迎えよう」
男はそれを引き受け、夜になるのを待った。真夜中になり、娘はろうそくを持って屋敷を出た。
男がこっそり後をつけると、墓場にたどり着いた。
物陰からじっと見ていると娘は棺桶を掘り起こし蓋を開けると
遺骨を一本、手にとって食べ始めた。普通なら腰を抜かしてしまう所だが、
男はぐっと気持ちを落ち着けて様子を見続けた。
骨を食べ終わると、娘は屋敷へと帰っていった。
娘の姿が見えなくなってから男は棺桶の中の骨を調べてみた。
すると娘が食べていたのは人の骨ではなく、骨の形をした飴であることが分かった。
男はその飴を一本持ち帰り、長者に見てきたことを話した。
「……これがその飴です。お確かめ下さい」
「いや、分かっておる。それはわしが飴屋に作らせた物だからな。
この家を継ぐ者は肝の座った者でないといかん。そこで結婚を申し込む男が来る度に、
娘に芝居を打たせているという訳だ。あんたほどの男は他におらん。娘をやろう。」
こうして男は娘と結婚し、末永く幸せに暮らしたそうな。


棺桶の中の骨(実際には飴ですが)をなめる女……
これも使えそうなシーンです。


ネタその3「3人の医者」
どんな怪我でも治してしまうことで有名な3人の医者が宿屋に泊まった。
医者達は主人に医術の腕前を見せてほしいと言われた。
そこである医者は腕を、またある医者は眼球を、最後の1人は心臓を
身体から切り離し、主人に渡しながら言った。
「明日の朝にこれを元通りにくっつけてみせましょう。それまで預かっていて下さい」
主人は医者達の身体の一部を戸棚にしまったが、気づかぬ間に入ってきた野良猫が
くわえてどこかへ持っていってしまった。
身体の一部が無いのに気づいた主人は近くの処刑場に行き、晒し者にされていた
盗人の死体から腕を切り取り持ち帰った。同様に眼球は猫、心臓は豚のもので間に合わせた。
翌朝、主人は何食わぬ顔で盗人の腕と猫の眼球と豚の心臓を医者に渡した。
医者達が渡された身体の一部を自分の身体にはめて塗り薬を塗ると
あっという間に傷口がふさがり、継ぎ目も分からなくなった。
だが身体をつないだ途端に、盗人の手をくっつけた医者は手が勝手に動き始め、
主人のポケットの中にあった財布を掴んだ。猫の目の医者は辺りが見えなくなった。
そして豚の心臓の医者はそこら中を四つんばいで這い回りだした。
医者達は訝しがりながら言った。
「どうも様子がおかしい。我々はどうやら盗人の手、猫の眼球、豚の心臓を
つけてしまったようだ。早く本物をお出しなさい」
主人から訳を聞いた医者達は激怒したが、宿にある金を全て受け取ることで
なんとか許してやることにした。だが、いくら金をもらっても
自分達の身体を無くした医者達の悲しみが癒えることは無かったという。


宿屋の主人が死体の腕を切り取ったり、猫や豚から眼球と心臓を取り出す部分。
ここは使えそうです。「腕前を見せるためだけに自ら身体の一部を切り離す」
「盗人の手が勝手に動く」といったやや苦しい点もありますが、
童話であることを考えれば許容できる範疇でしょう。


以上が問題になりそうな元ネタの一例です。
次の章ではこれらの元ネタを使って実際に問題を作ってみましょう。

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